●父の背中越しに

ばぁちゃんを送る全てが終わった翌朝。
静かに仏壇で手を合わせた。
父が来てお線香を上げた。
お客様用の長い新しい蝋燭を下げて、ちびた2センチくらいの蝋燭に火をつけて。
「ばぁちゃんの最後の灯火みたいな蝋燭につけるか」って。
ばぁちゃんは逝き時を選んだんじゃないかって言ってた。
あんなに家に帰りたがっていたのに
一言も言わずに、見極めたんじゃないかって
納得したようなことを言いながら
父の背中は、なんだかしょぼくれて見えた。
姉と妹に囲まれた一人息子の想いは、叔母たちとは少し異なるらしい。
父の肩越しに、美しい刺繍が施された桜色の布で覆われた お骨入れ。
隣に、着物を着た ばぁちゃんの遺影。
朝ごはんを食べる父と替わって正面に座った。
涙が溢れた。
悲しいんじゃない。
寂しいんでもない。
言葉にするのは難しいけど、
なんだか良かったなぁ・・・と思ったんだ。
私は、この家の子供で家族に愛され、ご先祖に守られて生きていて
ここに生まれてよかったなぁ、、、って。
ここに居て生活もできるけど、私はこれから自分の選んだ場所に帰って魂を磨くんだ。
そんな感情を感じる為に、私は故郷を離れたのかも知れない。
その時間は、とても静かで仏壇と私の周りだけが存在してるみたいだった。
涙が溢れているのに、私はなんだか嬉しくて
見えないけどたくさんいらっしゃるのであろうご先祖様たちに笑ってご挨拶した。
いってきます。
どんなことがあっても帰る場所があるって想いは、私を強くする。