●ありがとう@シカゴ オヘア空港
ラジオで話した「ありがとう」
シカゴ・オヘア空港での出来事。
ソルトレイクからシカゴへの長いフライト。
前の席に座っていた男性と長いこと話した。
名前はブレントくん。
彼は福岡の前原に数年住んだことがあったそうで、とても日本を九州を懐かしがっていた。
話に夢中になって私を振り返っている姿は、小学生の教室に一人は居る男の子みたいだった。
スチュワードに何度も「前を向きなよ!」と学校の先生みたいに言われても動じない。
一旦は前を向いて座ってもすぐに振り返りニコニコして私に話しかけ続けた。
君の英語ならこっちで稼げるよと褒めてくれたり、一人でよく来たねと関心したり、
彼の同僚がみんな寝ている、などと言ってキョロキョロしたり、まったく落ち着きが無い。
2人の子供のパパだと言ってたけど、ちっちゃな男の子みたいなオーラを放っていた。
こちらの人たちは、なんてのびのびと「自分」でいるんだろう。
私も安心して自分でいられる。
彼のおしゃべりのおかげで長いフライトが あっというまだった。
おかげで楽しかったよ、とお互いに言い合って名残惜しく別れた。
シカゴの空港は、とにかく広かった。
ウキウキしながら一人で歩きまわった。
そのうち空港の外が見る見る暗くなり、
ガラスには大風に煽られた雨がたたきつけられ雷が鳴り出した。
飛行機の発着状況の表示画面は黄色の文字で「キャンセル」と「遅れ」が増えてきた。
私の向かうメンフィス空港行きも定刻より遅れになり、ゲートも変わった。
注意深く表示をチェックしてゲートが変わるたびに移動した。
はじめての一人ぼっちの海外旅行。
いい英語の勉強とはいえ、ちょっと心細かった。
そこへ、3時間前にバイバイしたはずのブレントくんがやってきた。
彼の乗るはずの飛行機はキャンセルになり、他の飛行機を手配したのだそう。
時間があったので、何かごちそうしようと会いにきてくれたんだという。
優しいなぁ。
私は、ランチは食べちゃったけど、喉乾いてるんだよねーと素直に言って
彼にオレンジジュースをおごってもらった。
遅れはするけど、私の乗る飛行機は飛びそうだった。
気をつけてね、ありがとう、あなたもね・・・と握手して彼は去った。
その後、なんということか、私は飛行機に乗り遅れてしまう。
どうやら違う列に並んでいたらしく、気が付いてカウンターに向かうも時既に遅し。
「この飛行機は既に飛び立ちました」とカウンターの女性はあっさり言って
私が持っていたチケットをビリビリ破き、新しいチケットを手渡した。
現在のゲートはF。新しいチケットのゲートはB。
悔しいけど自分のミスだ・・・・パニックになりながら遠いゲートBへ歩き出した。
ふと表示板を見ると、私が乗るはずだった飛行機の予定時刻がまた遅れて表示になっている。
待て、これは乗れる!!
踵を返しFゲートの番号へ急ぐ。
カウンターにはスパニッシュ系の男性。
どんなに説明しても「あなたの飛行機はこれ」と新しいチケットを指す。
「さっき破かれたんだ。そこに見える飛行機は私が乗る飛行機だ」私も譲らない。
「メンフィスで友人が待ってる。連絡が取れない。乗らないといけない」
乏しい英語能力とパニックの頭。交渉ができない。
悔しくて涙が出た。
「泣いてもどうにもなりませんよ、マム(女性に対する尊称)」
言葉は丁寧だけど、すっごく慇懃無礼だった。
5メートル程離れたところで、ビジネスマンが
私はこれにならなくてはならない、だからここに居るといっているのが聞こえた。
そのうち、気が付くと、そのビジネスマンの姿はなかった。
何故私がダメで、ビジネスマンはオッケーなのだろう。
悔しくて大泣きした。
「It's my first time to visit America!!」←初めてのアメリカなのにぃー!(今思うとまるで子供だよ)
ちっちゃなチカがカウンターで駄々をこねている。
うんざりしたスタッフは真顔で言った「あなたがすべきことはB22ゲートへいくことです!」ピシャリ
そのまま、ビービー声を上げて泣きながら、涙の粒をボトボト床に落としながら
ナメクジみたいに涙の跡を残しながら、大人の私は子供のように歩いた。
どこもかしこも人だらけだった。
カフェもレストランもデリも、椅子という椅子は埋まり、
ゲート前の椅子も埋まり、人々は床に座ったりして時を過ごしていた。
デパートで迷子になった子供みたいに
私は ふてくされて、オイオイ泣きながら歩いた。
涙で曇る先に、集団の中に見たことがある人が居た。
ブレントくんだった。
「What happend?」目が見開かれていた。
そりゃそうだ。もう二度と会わないはずの私が居て、しかも泣いてる。
ちょっとそこに座ろうよ。
壁際の手すりに座って、泣きじゃくる私の聞き取りにくい英語を聞いてくれた。
落ち着いた頃、彼が話してくれた。
チカはラッキーだよ。
乗り遅れても次のに乗って目的地に行ける。
友達にもちゃんと会えるよ。
僕らの飛行機はまたキャンセルになった。今日はもう無理だ。
ホテルを取ろうと思うけど、みてごらん、こんなに人でいっぱい。
ホテルも人だらけだろう。悪くすると空港で過ごすことになるだろう。
大丈夫?僕らのほうが片付いたら行くからね。
その中で一言日本語が。「またくるけん」って九州弁が出てきた。
あったかかった。泣けた。ありがとう。
彼と別れて、そのままゲートに向かった。
ちょっとしゃくりあげながら。
乗り過ごしたとき、たぶん私は呼び出しにも反応できなかったんだ。
次は絶対に聞き逃すまい。
前のゲートで見たことがある人が何人か居た。話しかけてみた。
エメラルドグリーンのお洋服のマダム。
ちょっとお伺いしていいでしょうか?マダムはどうして先ほどの飛行機に乗れなかったのですか?
彼女の息子はパイロットで、彼女は空席がある時だけ乗れる類のチケットなのだという。
いつでも後回なんだと疲れも見せずに微笑した。
大丈夫、あなたはきっと次で乗れるわよ。
・・・カウンターでの一部始終を見ていたのであろう、励まされてしまった。
B22カウンター前に陣取る私。
フィリピン系の女性が話しかけてきた。
あなたはラッキーよ、私たち家族は昨日からここに居る。
私のチケットはダブルブッキングだったらしくて昨日も乗れなかったの。
あなたの気持ち分かるわ。・・・彼女も見ていたらしい。そりゃそうだ。
韓国から来ているという女性も話しかけてきた。
あなたの名前呼ばれてたわよ、さっき。
逃しちゃうなんて残念だったわね、
あなたのシートに乗っていった人は今頃夕ご飯食べてるわよ悔しいわね。
・・・・彼女も知ってる。みんな知ってるのね。ちょっと恥ずかしくなったけど開き直った。
みんな優しい。
何時間も待って、ようやく飛行機が到着し、また待って
とうとう搭乗手続きがはじまった。
私はカウンターにぴったりくっついてアナウンスする人の口元だけに集中した。
どうやらスタンバイリストというやつで、空席が出たら乗れるという扱いらしい。
正規の人たちが乗り終え、スタンバイリストのみなさん・・・と聞こえ始めた。
全神経を集中してアナウンスするスタッフの口元を見つめる。
あんまり集中しすぎて頭が痛くなってくる。泣いて疲れているし。
一人づつ、アメリカウルトラクイズの「勝ち抜き」コールみたいに
呼ばれた人は通路へ消えていった。
アルファベットでひとつづつ粒読みになった段階で気づいた、私だ!!
思いもよらない発音で私の苗字は呼ばれた。
そうか、一人ひとり違う癖があり、正しく発音されるとは限らないんだ。
名前は呼ばれなかった。おそらくシカゴとチカコが似てるからだろう。
注意深くなかったら聞き逃してしまうところだった。
下を向いて歩いた。
私の後ろに、韓国からの女性や新婚旅行の白人カップルがそのまま待ってた。
飛行機に乗る3倍以上の人たちが空港で過ごすことになるんだろう。
申し訳なかった。でも乗らなきゃ困るし。
そして、私が飛行機のシートに座ると、扉が閉められた。
私が最後だった。
皆が言うとおり私はラッキーだった。
ブレントくんには会えなかったけど、彼の言うとおりになった。
ふと後ろを向くと、斜め後ろの席にフィリピン系の親子が居た。
また「ここ」で会えて嬉しいわ。本当にそうね。
9時間空港に居た私、ようやく飛行機に乗れた。
いろんな人に優しくしてもらった。
中でもブレントくんの「またくるけん」が忘れられない。
ありがとう。きっともう二度と会わないけど、忘れない。
ありがとう、ありがとう。