新鮮。音の洪水。
異空間に入り込んだ感じ。
私のパンクロックは、「ブルーハーツ」頃で閉じていたから、すごく新鮮だった。
ライブハウスの扉を開ける前から重低音。開けたら爆音。
髪はツンツンに立てて皮のライダースジャケットの男の子達がいっぱい居る。
みんなおしゃれなんだよ。
全てをきっちりキメている子は、ライダースジャケットも鋲だらけか、かっこいいデザインが背中に描かれたものだったり。足元はごっついブーツ。ドクロや赤のチェック柄。
ステージからも、ステージの下からも、突き上げられた拳とか中指立てとか。わ~。
久しぶりにパンクスの集団を見た。
こんな機会でもなかったら一度にこんなにパンクスも見れなかった。ステージに夢中になってるのをいいことに、私は音楽を楽しみながらもジロジロ観察させてもらっちゃった。
こういうファッションも音楽も大好きなんだろうなぁ、皆。
女の子達もかわいいんだ。ボーイッシュな子も居たり、ミニスカートにロングブーツを合わせが可愛くて、でもギャル系とは明らかにファッションジャンルが違う。
場所は熊本Drum Be9というライブハウス。
企画は、熊本の THE PISTON SLAPPIN' というパンクバンド。
ホームページを開くと、訪問者数のカウンターが「・・・・人目のモヒカン」と迎えてくれる(笑)
彼らがトリだったんだけど。もう、すごいのすごくないのって。
縦ノリの激しいリズムとお客さんの煽り方、クールとやんちゃのコラボレイトのエネルギー。
スリーピースバンドの彼らは、めちゃくちゃカッコよかった。ワールドマップって曲がよかった。
オールスタンディング(席無し)のライブでは、やっぱりステージ前が一番激しい。
跳ねる、拳を高く上げる、高く上げた両手で手拍子などは一般的に見られる光景。
その時の空間は、いつも見かける光景とはまた雰囲気が違う。
高く掲げた拳は中指が立っていたりする。互いに体をぶつけ合う、そして最高なのが「ダイブ」。
人が密集してギュウギュウのパンクなノリのライブで見たことがあるんだけど、
ステージ前の数十人の中で「ダイブ」をやってるのを目の前で見たのは初めて。
パンクな皆さんには見慣れた光景だろうけど、ちょっと文字にしてみる。
「ダイブ」文字どうり、人の上に飛び込む。
仰向けだったり、うつ伏せだったり、横向きだったり。
MTVやスペースシャワーTVのライブ映像で見たことがあるかもしれない。
いうなれば、胴上げの「上に揚げずに、送っていく」バージョン。
ダイブした人は、まさに人の海の上を流れて来る感じなのだ。
支えてもらわなかったら、頭から落っこちる。人数が限られていたらなおさらのこと。
自ら進んで、自分の体を預ける。下に居る人たちは、支えて送る。
そして着地まで危なくないように支える。
見てるとすごいんだってば。頭打ったら終わりだよ?打ち所悪かったら大変だよ?
それでも、飛び込むの。
ハイになって楽しくて「うわぁ~!」ってしてるのかもしれないけど。
なんだか私には、同じように楽しんでる仲間を「信じて飛び込む」ように感じれらた。
それくらい楽しそうにステージ前には体をぶつけたり、跳ねたり、ダイブしたりしていた。
お客さんも、他のバンドの出演者達までも楽しそうに。
わぁ~、いいなぁ。と光景と雰囲気に酔っていたら、隣に居たはずの旦那がステージ前集団に。
ジャンプして体をぶつけあう彼らの体は成長してるけど、やってることは子供と一緒の「おしくらまんじゅう」。あんまり可笑しくて、ゲラゲラ笑った。爆音で聞こえやしないけど。
あんまりにも楽しそうだし行きたくなるよね~。ははは。気持ちは分かるぞ。
私の隣で旦那を見てゲラゲラ笑っていたはずの6号ドラムスQちゃんと、6号が大好きなVADERくんまでステージ前の集団のの端っこに参加。キミたち面白すぎる。
しばらくして、息を切って帰って来た旦那は耳元で「いや~、我慢できなくなっちゃってさ」だって。
やっぱり。いや~音楽はジャンルじゃないのね~。
さて。何故、熊本か。
説明には、「ダイブ」から数時間巻き戻す必要がある。
今回のイベント主催のTHE PISTON SLAPPIN'と、福岡のライブハウスで対バン(同じイベント・ライブハウスで演奏するバンドの何組かで一緒だったことを言うらしい)にて仲良くなったという6号、熊本で対バンに呼んでもらったのだという。
妻より6号の旦那様と共に6号の2台の車に分乗して熊本入りした私、彼らのライブを楽しみにしていた。
しかし、事件が起こったのだ。
朝から具合が悪く、集合場所で吐きまくっていた6号ギタリストのタツキくん。
熊本到着後に具合悪さを押してのリハーサル後、病院へ。
そこで、なんと盲腸発覚。ドクターストップ。
ステージに立つどころか熊本での緊急入院か佐世保へ戻っての入院かの2択を迫られたとの連絡。
その時私は、6号メンバーと旦那と離れ、一緒に熊本入り数名のファンとショッピングを楽しんでいたが、思ってもみなかった連絡にしばし呆然とする私たち・・・・・。
ベースの柴ちゃんがタツキくんを乗せて佐世保に戻ることになった。
熊本に残るのは、ドラムスQちゃんとギターヴォーカルのマツくん。
ライブに穴を空ける訳にいなない6号は、マツくんのソロ演奏を決断。
皆に「心配しないで」と伝えて欲しいと伝言をくれたタツキくん。
キビキビと機材を積み込み、車へ乗せる柴ちゃんとマツくん、Qちゃんの横顔。
「佐世保の病院に着いたら連絡しますから!」という柴ちゃんを、切ない気持ちで見送った。
それから、2時間後・・・・・
パンクバンドばかりの中に、ぽつんとアコースティックギターの弾き語り。
突然決まったソロ演奏。
最高に「パンク」ノリで温まった、トリの一つ前という順番。
その中で、マツくんは確実に自分の世界を作っていた。
アニメ「キテレツ大百科」(?)のコロッケの歌の音楽が流れる中(これをSEというらしい)、幕が開き、ステージの上に、バーカウンターで使われるような高い椅子に座ったステージ中央のマツくんと、こちらから見てマツくんの右横に立ったQちゃんが現われた。
ステージにタツキくんと柴ちゃんが居ない理由、6号4人で演奏できない理由とお詫びを二人は心から語りかけた。拍手と掛け声がかかった。
Qちゃんがステージ上から去り、マツくんの演奏がはじまった。
セットリスト(曲目と曲順)は以下。
「七色のおもひで」
「約束の場所」
「永久に」
「五月」
「風」
ステージ前に立っていた佐世保からの数名だけが立ったまま、オールスタンディングの会場のはずが、気づけば皆、床に座っていた。じっと聴き入っていた。
パンクのお兄ちゃんたちが。パンクを愛する人たちが。
ジャンルが全然違うアコースティックの弾き語りを、静かに、聴いていた。
ただならぬ気配を背中に感じたまま、もう座るわけにいなかくなって、私はそのまま立っていた。
ステージの前に、マツくんの正面に。
曲の間におしゃべりを入れながら。
今朝、佐世保の集合場所で熊本に連れてきたお客さんの車が大変なことになっていたこと。
ガードレールが無い崖から、左後輪が落ちていた。
右後輪はギリギリで崖直前に踏ん張っているものの、車の左側の真ん中が崖に直面。
助手席のドアのあたりから左後輪、右後輪のギリギリの点を結んだ三角形は宙ぶらりんで下に地面が無く、ご近所の男性が軽トラックに結んだロープで引っ張って下さって、崖下からメンバーが車を押し、復帰したこと。
追い討ちをかけるように、タツキくんの盲腸発覚とドクターストップ。
しかし、そんな話までネタにして、ピンチをチャンスに変えている姿がそこにあった。
いつもお客さんの目を見てコンタクトしながら歌うマツくんは、珍しく時々長く目を閉じて自分の内側を見つめながら歌っているみたいだった。
ずっと一人で音楽をしていたマツくんにバンドを一緒にしようと口説いて口説いて口説き落としたというQちゃんは、誰よりも誇らしげにマツくんの演奏を楽しんでいたに違いない。
THE PISTON SLAPPIN'が6号の「五月」が好きだと、お客さんにもそんな話をしていてくれたという大きな後押しの影響もあいまって、マツくんが演奏後、6号に興味をもってくれたお客さんがマツくんとQちゃんに声をかけていた。CD『みんなのうた』も売れていた。
なんだか素敵な光景だった。
ライブハウスを離れるとき、ものすごく鋲がいっぱいついたライダースジャケットを着ているパンクファッションの男の人がマツくんに「良かったっす、聴き入って涙がでそうでした」と言っているのを聴いた。
ジャンル超えが言葉になって証明されていた光景を私は見た。
「今日はお客さんとして客観的に楽しめた。よかった」というQちゃん。
「一人でやっていたおい(俺)が、今じゃバンドマンっすからね」というマツくんの横顔。
いやぁ、よかった!とマツくんを手放しで褒める旦那。
皆とバイバイをして車をスタートさせた時の凛とした柴ちゃんの横顔。
6号とタツキくんを気遣う対バンの男の子達の様子。
熊本もパンクバンドも、マツくんの演奏も全てを嬉しそうに楽しんでいた、行動を共にしてくれた子達。
思い出してはニヤニヤしてしまう眠気頭の真夜中。
私は、やっぱり人が作り出すドラマに興味がある。
ちょっと見せてもらう「人間っていいなぁ」のたびに幸せになる。